NVIDIA BioNeMo Inference Runtime発表、Boltz-2の推論を高速化

2026年9月18日

NVIDIA BioNeMo Inference Runtime発表、Boltz-2の推論を高速化

概要

NVIDIAは2026年9月10日、生体分子構造予測モデルの推論を高速化する「NVIDIA BioNeMo Inference Runtime(BioIR)」を発表した。本ランタイムは、既存のPyTorchワークフローを維持しながらNVIDIA GPU上で対応モデルの処理を加速し、Boltz-2などのモデルにおけるスループット向上や消費電力量の削減を実現する。

発表の内容

BioIRは、生体分子構造予測のパイプライン全体を効率化するプロセッサおよびPyTorchモジュール統合を提供する。主な特徴と最適化の仕組みは以下の通り。

  • パイプライン処理として、入力のパース、トークン化、特徴量生成、GPU推論、PDBまたはmmCIF形式での出力をエンドオブエンドで実行する機能を持つ。
  • カーネル選択、CUDA Graphキャプチャによるモジュール最適化、Rayレプリカによるパイプラインスケーリングの3つのレイヤーで最適化を行う。
  • Rayエグゼキューターを使用することで、1つのノード上の各GPUに完全なモデルレプリカを配置し、CPUステージとGPUでの折りたたみ処理をオーバーラップさせてスループットを向上させる。
  • 8基のH100 GPUを用いた1,000件の人由来ダイマー標的のベンチマークにおいて、BioIRで加速されたBoltz-2は、割り当てられたGPU時間あたり58.5Kの折りたたみ済み残基を処理し、torch-compiledによるオープンソース実装の20.2Kと比較して2.90倍のスループットを達成した。
  • 1,000万件の同等な標的を折りたたむために必要な推定的エネルギーは、8基のH100 GPUノードのTDP換算で、BioIRが11 MWh、公開されている実装が35 MWhと試算されている。

背景

生体分子構造予測は現在プロテオームスケールで実行されることが多く、大量のワークリストを効率的に処理することが求められている。BioIRは、AlphaFold Database(AFDB)の最近の拡張において、4,777のプロテオームにわたる約3,100万件のタンパク質複合体構造の生成加速にすでに活用されており、そのうち181万件が高信頼度予測として公開されている。こうした大規模な構造予測ワークロードにおける処理効率の課題に対応するために開発された。

ローカルLLMの利用者への影響

BioIRはオープンウェイトの構造予測モデル(Boltz-2、OpenFold2、OpenFold3など)をローカルまたはオンプレミスのNVIDIA GPU環境で大規模に実行する技術者にとって、推論処理の効率を大きく改善しうるツールとなる。主な影響と留意点は以下の通り。

  • 公式リポジトリとして公開されており、開発者は自身の環境に導入して大規模な構造予測ワークフローに組み込むことができる。
  • 事前コンパイル済みのCUBINを含むホイールとして提供されるため、実行時にnvccやCUDAツールキットの完全なソースビルド環境を必ずしも必要としない。
  • 実行にはPython 3.12以降、互換性のあるNVIDIA GPUとドライバー、および対象モデルのチェックポイントや化学メタデータが必要となる。
  • ベンチマーク結果や最適化の効果は特定のハードウェア(H100やH200など)や入力構成に依存するため、すべてのモデルやデータセットで一律の効果が得られるとは限らない。

出典